ご両親が亡くなられた後、誰も住まなくなった実家をどうするか悩む方は多いでしょう。
空き家を所有していると定期的な清掃や管理が大変で、実家が遠方にあるほど、掃除に行くための往復交通費と時間、労力もばかになりません。
家のメンテナンス管理や庭の清掃を仮に専門業者に依頼する場合でも、たとえ3~4か月に1回だけでも、都度5万円と仮定しても、年間20万円はかかります。
また、空き家でも毎年の固定資産税が数万円~数十万円かかります。
さらに、空き家を所有していることには様々なリスクが伴います。
雑草が生い茂れば害虫や野良猫などの棲み処になる恐れがあり、悪臭を放つ原因になるかもしれません。
雨どいやブロック塀などが破損してしまうと、近隣の方を怪我させてしまうかもしれませんし、暴風雨などの悪天候時には、近隣家屋を破損させてしまう危険性も想定されます。
そこで今回は、誰も住む予定がない実家を持ち続けることによる費用や、実家じまいでかかる手間と費用、そのやり方、家の解体で市区町村に出して貰える補助金に関しても説明します。
実家じまいとは?
実家じまいとは、ご両親が亡くなった後、空き家となった実家を処分するまでの全ての過程を指します。
具体的には、以下のような作業が含まれます。
- 家財道具の整理・処分(遺品整理)
- 不動産の売却・賃貸の検討
- 近隣住民への挨拶
- 家屋の解体の検討
- 実家の名義変更手続き
- その他各種手続き
実家じまいを始める前に
実家じまいは数日で終わるようなものではありません。
長ければ5~10年かけて実家じまいをする方もいるので、実家じまいは根気よく取り掛かる必要のある、骨の折れる作業だと言っても決して過言ではありません。
したがって、実家じまいを始めるにあたっては、しっかりと手順や必要な内容を把握し、かかる費用を安く抑える工夫も必要になるでしょう。
実家じまいを始める前に、まずは以下の点を整理しておきましょう。
- 実家をどうするか: 売却するのか、賃貸するのか、解体するのか
- 誰が責任者になるのか: 家族間で役割分担を明確にする
- 予算はどれくらいか: 費用を抑えるポイントも事前に確認
- スケジュール: どのくらいの期間で進めたいか
実家じまいの手順
まず、実家じまいのおおまかな手順について解説します。
家族で話し合い
実家じまいの必要性や目的について、家族全員で話し合い、共通認識を持つことが重要です。
誰がどの役割を担うのか、スケジュールや費用についても話し合っておきましょう。
家財道具の整理・処分
実家を売却するにしろ、解体するにしろ、ご両親の遺品が溢れている状態では前に進むことができません。
ですから、実家の中の不要なものは処分し、必要なものは家族で分配する必要があります。
実家の売却の方向で進め、買い手が見つかった場合、もしかしたらその方が「早く住みたい」と申し出てくるかもしれません。
そうなった場合、仕事が休みの日に時間を割いて遺品整理や家財道具の処分をするのは、肉体的にも精神的にも重労働です。
実家が田舎など、遠方にある場合は往復の移動だけでも大変でしょう。
実家を解体することになった場合でも、残したいもの、処分して良いものを判別しておく必要があります。
家財道具をはじめとした遺品などの残置物を、解体業者にまとめて処分依頼することもできます。
しかしその場合、解体費用が数十万円~100万円ほど値上がりしてしまうことは珍しくありません。解体業者の手間と労力が余分にかかるからです。
ご両親が物を捨てられずに取っておく性格だった場合、遺品整理は大変な作業になりがちですから、実家じまいを決断した時から少しずつ進めることおすすめします。
また、実家のある地域のゴミ出しルールは、ご自身がお住まいの地域とは異なる可能性が高く、市区町村専用のごみ袋が必要な地域も多いのでゴミの整理と処分には注意しましょう。
自分達だけでは遺品整理が難しい場合は、プロの業者に一任することも可能です。
遺品整理業者は玉石混交ですが、以下のライフリセットなどは他社で断られた物件でも対応してくれますので、必要な方は問いあわせてみて下さい。
不動産や預貯金など財産の査定
実家にある財産をリストアップし、それぞれの価値を把握する必要があります。
預貯金に関しては銀行口座をチェックします。
不動産(家と土地)は不動産業者に査定してもらい、実家の売却・賃貸・解体の判断をします。
いきなり不動産業者に来られて営業されることに抵抗がある場合は、イエウールなどの無料査定サイトを利用しましょう。
売却・賃貸・解体の3通りの出口の中から、実家じまいでまず考える方が多いのは売却でしょう。実際9割以上の方が実家売却を選択します。
築年数がそれなりに経っている実家や、地方の交通アクセスの悪い地域にある実家の場合、数か月も売れないことは多々あるかもしれません。
それでもやはり売却を最優先で考えるべきで、売り出す諸条件を見直したり、相談する不動産業者を変更するなどして辛抱強く継続すべきでしょう。
その理由は、後述しますが、実家を解体するだけでも数百万円の費用がかかるからです。
「古家を壊すだけなので数十万円程度で済むのではないか」と、解体費用を低く見積もっている方は少なくありません。
しかし、最も解体費用の安い25坪~30坪程度の木造住宅を壊すだけでも、最低でも150万円以上はかかります。
空き家の解体費用が捻出できず、日本各地で誰も住まなくなった空き家が放置され、社会現象にまでなっているのにはこのような背景があるのです。
また、実家を損することなく売却するためには、まずは空き家となっている実家の現在価値を正しく知る必要があります。
イエウールなどの無料査定サイトでまずは概算を把握しましょう。
買主・借主の募集
実家の現在価値を把握できたら、買主・借主の募集を行います。
実家がある地元の不動産業者に自分で依頼するか、イエウールを利用すれば希望者には地域の不動産業者も紹介して貰えます。
実家を最も高額で売ってくれる業者や、親身になって相談に乗ってくれる担当者に依頼し、買主・借主の募集を行って貰いましょう。
売買契約・賃貸借契約
実家の買主・借主が見つかったら、不動産業者立ち会いのもと契約を交わします。
売却するのであれば売買契約、賃貸として貸し出すのであれば賃貸借契約を結びます。
賃貸のニーズは都心なら比較的ニーズはあるのですが、実際は実家を賃貸に出す方はほとんどおらず、ほとんどの方が売却を選択しています。
不動産業者に仲介をお願いして借主が決まれば家賃収入が得られるので、確かに魅力的かもしれません。
しかし、賃貸経営は事業ですから、手間もかかりますし、リスクを背負うことになるから多くの方は賃貸を選ばないのです。
通常、何年もご両親が住んでいた実家は貸し出す際はリフォームを行う必要があります。
外壁塗装、水回り設備の交換、フローリング材の交換、外構工事など、数百万円単位でリフォーム費用がかかります。
初期投資に数百万円かかるわけですから、たとえ毎月の家賃収入が得られるとして、初期投資ぶんを回収できるのは数年先になってしまうわけです。
また、賃貸経営を始めても、給湯器が壊れたり、雨漏りするようになるなどのトラブルは高確率で起こります。
そのような際には貸主責任で修理しないといけないと法律で決まっていますので、想定外の出費がかさめば、マイナスになってしまうリスクがあるのです。
このような理由をから、実家じまいをする方の大半は売却を選択しています。
実家の名義変更
まだ行っていない場合は、実家の名義を相続人に変更します。
相続が発生した場合、つまりご両親が亡くなった場合、不動産(家や土地など)の名義変更は自動的には行われません。
相続人が不動産を相続するには、いくつかの手続きを経る必要があります。
実家の名義変更に関する主な手続きは以下の通りです。
相続人の確定
まず、誰が相続人であるかを確定する必要があります。法定相続人は、故人の配偶者、子ども、親、兄弟姉妹など、民法に基づいて定められています。
遺産分割協議
相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを決定します。
この協議は全員の合意が必要で、合意に至らない場合は家庭裁判所に申し立てて裁判所の決定を仰ぐことになります。
相続登記の申請
不動産を相続することが決まったら、法務局に相続登記の申請を行います。
この手続きには、遺産分割協議書、相続人の戸籍謄本や住民票などの書類が必要です。また、登記費用も発生します。
令和6年現在、相続登記(実家の名義変更)は、相続が発生してから3年以内に行うのが新たに義務付けられています。
相続人が相続した事実を知っているにも関わらず相続登記を怠ると、10万円以下の過料を取られます。
ただし、登記を怠ると、将来的に実家の売却や贈与、担保設定などの際に問題が生じる可能性があります。
相続には複雑な法律が関わるため、不明点や手続きに不安がある場合は、専門家(弁護士や司法書士など)のアドバイスを受けることをおすすめします。
その他各種手続き
実家を処分する場合は、住民票の転出届や固定資産税の申告なども行います。
電気・ガス・水道などの名義変更も行います。
なお、ガスについては実家に誰も住まなくなった段階で早々に解約しておくべきでしょう。
電気や水道は、掃除をする際に使えないと困ることになりますので、そのままにして基本料金だけ払い続けるのが普通です。
実家じまいでかかる費用
実家じまいをする方の多くは売却を検討し、買い手が見つからない場合は解体することになります。
実家を売却するのか解体するのかによって、かかる費用はまったく異なります。
それぞれのケースでかかる費用相場を知りましょう。
実家を売却する場合の費用
買い手が見つかり売却する場合は、まずは実家の中のものを処分して綺麗にしなくてはいけません。
残存状態そのままで買い取ってくれるケースも中にはあるかもしれませんが、その場合の買取価格は大幅に下がる傾向にあります。
ですから、時間がある場合は大きなものは処分しておくべきだと言えます。
実家を売却する場合にかかる大きな費用は、不用品回収・遺品処分費用でしょう。実家が遠方の場合は往復の交通費です。
遺品整理がとても手に負えなくてプロの手を借りる場合は、遺品整理業者への依頼費用がかかります。
遺品整理の相場は地域や業者によって異なりますが、作業内容、処分量、アクセスよって価格が決まります。
部屋数や作業時間も考慮されるでしょうし、遺品の中には壊れたものや使用できないものもあるかもしれません。
階段やエレベーターの有無、運び出しのしやすさなども価格に考慮反映されるでしょう。また、たとえば特定の家具や家電の分解や移動が必要な場合、追加料金がかかります。
一般的な相場としては、数十万円から物が多いと100万円以上になることもあります。
自分達だけで手に負えない場合は、以下の遺品整理110番などに相談してみましょう。
実家を解体する場合の費用
実家が売れなかったり、あまりにも古すぎて買い手がつかない場合は、売却することになります。
その場合に解体工事費用がかかるのですが、木造住宅、鉄骨造住宅、RC造(鉄筋コンクリート)住宅によって費用が異なります。
解体費用相場 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
30坪 | 120~150万円 | 150~200万円 | 180~250万円 |
40坪 | 140~200万円 | 200~280万円 | 250~350万円 |
50坪 | 200~300万円 | 240~320万円 | 260~380万円 |
以下で紹介するように相見積りを取って少しでも価格を下げることは必須ですが、以下の『解体の窓口』のサービスを利用してまずは概算価格を知ることもできます。
実家じまいの費用を安く抑えるポイント
実家じまいは何も考えずに進めてしまうと、思いのほか費用がかかってしまいます。
遠方の実家の場合は何往復もする交通費で数十万円になるかもしれませんし、自分で作業をせずに業者や委託サービスを利用すると、軽く100万円は超えてしまいます。
また、実家を売却ではなく解体するとなると、少なく見積もっても解体費用だけで150万円以上かかります。
そこで、一連の作業や手続きの中で、費用を安く抑える工夫も必要になるでしょう。
不用品を売却する
家財道具や家電などの遺品を売却することで、収入を得ることができます。
遺品整理をしていると、物が大量にあるとめんどくさくなって「まとめて捨ててしまえ」と投げやりになりがちです。
しかし、食器などでも中には思わぬ値段がつくこともありますので、めぼしいものは買取して貰うようにしましょう。
ブランド品はもちろん、金やプラチナなどの貴金属は、常に一定の需要があるため、高額買取が期待できます。
年代物の家具や食器、雑貨などは、アンティークや古道具として高値で売れる可能性があります。
ミラーレスカメラなどの需要が高まっているため、カメラやレンズも高額買取が期待できます。特に、人気の高いモデルや状態の良いものは、高値で売れる可能性があります。
複数の業者から見積りを取る
不動産売却でも、解体工事でも、遺品整理における不用品買取でも、高額査定を得るためのポイントは、複数業者から見積りを取ることです。
業者によって見積りは大きく異なるため、複数の業者から見積もりを取ることで、比較検討することができます。
不用品の場合は、少しでも高額で買取して貰うためには、事前に掃除やメンテナンスをしたり、付属品を揃えたり、箱や説明書がある場合は一緒に査定してもらうことです。
ただし、あれもこれも全部完璧に行おうとすると実家じまいが一向に進まないので、時間がある方を除いては高額査定をして貰えそうなものだけに留めましょう。
自分でできる作業は自分で行う
一部の作業を自分で行うことで、実家じまいの費用を抑えることができます。
たとえば実家じまいを決断するまでの間、実家を維持は意外と大変です。
特に大変なのは雑草や草木の手入れで、少し放置しておくと夏場などは凄い勢いで雑草が生い茂ります。
空き家の管理や草むしりを専門業者に頼んだり、地域のシルバー人材センターに頼んだりすると、1回で5~10万円もの費用がかかります。
年間で数回利用するとそれだけで数十万円になってしまいますので、実家の庭管理を自分自身で行うことでこれらの費用を抑えることはできます。
行政の補助金・助成金を利用する
地方自治体によっては、空き家対策の一環として、解体やリフォームに係る助成金制度を設けている場合があります。
すべての市区町村で解体工事の補助金や助成金が出るわけではありませんが、100万円を補助してもらえる市区町村も存在します。
解体の窓口で見積もりを取得する際に、オペレーターの方に相談すれば市区町村の補助金・助成金についても詳しく教えてもらえます。
売却する場合に利用できるものはありませんが、賃貸に出す場合にはリフォームのために利用できる補助金があります。
たとえば家の断熱性を高めるための改修、太陽光発電システムの設置をはじめとしたエコや省エネのためのリフォームに対する助成金制度などです。
住む人の安全性を高めるための耐震診断や耐震補強工事も、リフォーム補助金の対象です。
実家を解体する場合は、補助金や助成金で古家の解体工事を補助してくれる自治体がありますし、家ではなくブロック塀の撤去だけでも補助金を出してくれる自治体もあります。
これは、危険な倒壊しそうなブロック塀を放置して、地域住民を危険にさらすことを行政が避けたいからです。
助成金の対象となる要件や金額は、自治体によって異なるため、詳しくは各自治体に問い合わせる必要があります。
実家じまいでの業者選びのポイント
実家じまいでは、専門業者に各種作業を依頼したり代行する事もできます。
日本では高齢化に伴い、実家じまいをする方が増えているため、そこに参入する企業も増え、依頼先が増えています。良く言えば便利になりましたが、はっきり言って玉石混交になっています。
ですから、危険な業者に依頼して損をしてしまわないためにも、信頼できる、経験豊富な業者を選ぶことが重要でしょう。
遺品整理を依頼する場合も、不動産を査定する場合も、買取を依頼する場合も、いずれも必ず複数の業者から相見積りを取り、比較検討しましょう。
無資格の業者が横行している業界もありますから、依頼する内容に関連する資格を取得している業者なのかどうかも、ホームページで事前に確認してください。
実家じまいでのトラブル事例と対策
最後に、実家じまいで注意したいトラブルについて紹介します。
思わぬことから大きなトラブルにつながることもあるので注意しましょう。
業者とのトラブル
実家の売却には、様々なトラブルが潜んでいます。事前にトラブル事例を知っておくことで、トラブルを回避したり、迅速な対応が可能になります。
特に多いのが仲介手数料に関するトラブルです。不当に高額な仲介手数料を請求されたり、媒介契約を解除したいのに、違約金を請求されるケースもあります。
買主が支払いを滞納したり、買主が転売目的で実家を購入するようなケースもあります。
複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討するのは当然のこととして、媒介契約前に仲介手数料や契約内容をしっかりと確認し、不明点は必ず解消しましょう。
近隣トラブル
実家の売却でよくある近隣トラブルは解体作業や建築工事の騒音や振動によって、近隣住民に迷惑をかけることです。
特に、早朝や夜間などの時間帯は、騒音や振動に敏感になるため、注意が必要です。
駐車スペースが少ない地域では、業者の車が近隣住民の迷惑駐車になることがあります。
不用品や粗大ゴミの処理が適切に行われないと、近隣住民に迷惑をかけることがありますし、生ゴミを放置すると、悪臭や害虫が発生する可能性があるでしょう。
実家じまいを始める前に近隣に挨拶をしておくことで、トラブルを最小限に防ぎましょう。
実家じまいの費用と流れ まとめ
実家じまいは、時間と労力がかかる作業です。スムーズに進めるためには、事前にしっかりと準備しておくことが重要です。
この記事が、実家じまいを成功させるための参考になれば幸いです。
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