ご両親が施設に入ってしまって実家に誰も住まなくなってしまった場合などに、家の名義変更を考える方は多いです。
あるいは、ご両親がまだ元気なうちに親から子へ実家の名義変更をするレアケースもあるでしょう。
そこでこの記事では、実家の生前贈与に関して、親から子への家の名義変更のメリットとデメリットを紹介します。
実家の生前贈与のメリット
親がまだ元気なうちに実家を生前贈与するメリットを紹介します。
介護費用の準備ができる
まず一つは、生前贈与によって、将来の介護費用を準備することができます。
親が認知症になり意思決定ができなくなってしまうと、介護施設への入所などにまとまったお金が必要で実家の売却をしたいと思っても、それができなくなります。
親から子へ実家の名義変更を済ませておけば、たとえ親が認知症になっても実家は子の所有物ですから、自由に売却が可能です。
相続税対策ができる
親が亡くなってから慌てるより、まだ元気なうちに家の名義変更をすることで支払う税金を減らすことが可能です。
実家の生前贈与には、暦年課税と相続時精算課税という2つの課税制度が選べます。それぞれの特徴を理解した上で、自分に合った制度を選択することが重要です。
1.暦年課税
暦年課税は、1年間に110万円以下の贈与であれば非課税となる制度です。110万円を超える贈与を行った場合は、累進課税によって贈与税が課されます。
暦年課税のメリットは、贈与した時点で相続税の納税が完了することです。
また、早めに財産を移転することで、将来の財産価値上昇による相続税の増加を防げます。
ただ、暦年課税の場合は、実家贈与の翌年には納税する必要があります。
ですから、都心部のように不動産評価額の高い場合は、子供自身のお金でまとまった納税資金を確保する必要があります。
2.相続時精算課税
相続時精算課税制度とは、60歳以上の親または祖父母から、18歳以上の子または孫へ実家を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。
相続時精算課税のメリットは、複数年にわたり最大2,500万円まで特別控除を適用することができる点です。
実家の評価額が2,500万円を超過した場合は、超えた部分も一律20%の贈与税率の課税で済みます。
贈与した時点で贈与税の納税は不要ですが、相続時(親が亡くなったとき)に相続税が課税されます。
ただし、親から実家を生前贈与する際に一度相続時精算課税制度を適用すると、他の親からの生前贈与に関しては暦年贈与制度に戻れなくなります。
どちらの制度を選ぶべきかは、個人の状況によって異なります。贈与する実家の評価額を考慮して選択しましょう。
家の現在価値を知りたければ、無料査定サイトなどを利用することで概算価値を知ることが可能です。
また、家の生前贈与は、複雑な制度も絡むため、専門家に相談することをおすすめします。
税理士や弁護士などの専門家は、個人の状況に合わせて適切なアドバイスをしてくれるでしょう。
将来の家族間のトラブルを防止できる
生前贈与は、遺言書よりも優先されるため、実家を生前贈与することにより、遺産分割に関する相続人の間でのトラブルを未然に防ぐことができます。
遺言書では、法定相続人以外に財産を遺すことは難しい場合がありますが、生前贈与であれば、自分の意思通りに財産を分配することができます。
ですから、実家の生前贈与は親の想いを尊重することができると言えるでしょう。
実家の生前贈与のデメリット
上で紹介したように、親がまだ元気なうちに実家を生前贈与することにはたくさんのメリットがありました。
その反面、いくつかのデメリットもあります。
実家の名義が親から子に移るということは、資産の所有者も子になります。
そうなると当然、固定資産税の支払いや実家の維持・管理負担は子が負担することになります。
地域や土地の敷地面積によっては、年に4回の固定資産税の支払い額が大きくなる方もいるでしょうし。そうなると金銭的負担が大きくのしかかります。
また、実家の名義を親から子に変更したとしても、実家の中に残っている物は親のものですので、残置物の整理が終わらないことには売却も解体もできないという課題があります。
親と子でよく話し合うことが大切
実家を生前贈与するに当たっては、親の意思も重要ですが、贈与される側の子の意思も重要でしょう。
贈与して欲しくなかったものを、勝手に贈与されることになってしまっては、それがきっかけで親子喧嘩にも発展しかねません。
自分が亡くなることを議題にすることに抵抗がある方も少なくありませんから、「こんな話があるみたいだよ」とテレビや本などで見た情報をそれとなく伝えてみることで、話し合うきっかけにすると良いですね。
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